「このままで、自分のキャリアは大丈夫なのだろうか…」「毎日同じことの繰り返しで、成長している実感がない…」。
週末の夜、ふとそんな不安に襲われることはありませんか? まるで、行き先を知らされないままバスに乗せられているような感覚。このバスがどこへ向かうのか、そもそもこのバスに乗り続けていて良いのか…。
そのバスのハンドル、実はあなたが握ることができる、と言われたらどうしますか? 会社にキャリアを「委ねる」のではなく、今の会社を「使いこなして」自分のキャリアを築いていく。そんな主体的な働き方への転換こそが、日々の仕事のモヤモヤを晴らす鍵なのです。
会社の「舞台」を使いこなせていますか?
少し考えてみてください。あなたは、あなた自身のキャリアという物語の「主人公」です。そして、今いる会社は、その物語を演じるための「舞台装置」や「小道具」が揃った、一つのステージです。
「会社が何かしてくれるのを待つ」という姿勢は、言わば、演出家の指示待ちをしている役者のようなもの。それでは、いつまで経ってもあなたの演じたい役は回ってきません。大切なのは、あなたが脚本家兼・演出家となり、「この舞台で、自分はどんな物語を演じたいのか?」を主体的に考えることです。
「待ち」の姿勢から「攻め」のキャリア戦略へ
では、どうすればキャリアの主導権を握れるのでしょうか? 必要なのは、ほんの少しの勇気と、3つのアクションです。
描く(自分のキャリア地図を作る)
まずは、あなたが3年後、5年後にどうなっていたいのか、どんなスキルを身につけたプロフェッショナルになりたいのか、ぼんやりとでも良いので「自分の地図」を描いてみましょう。憧れの先輩を目標にするのも良いですし、「AIに負けない〇〇の専門家になる」といった目標でも構いません。
提案する(会社と自分のWin-Winを探す)
自分の地図が描けたら、次に会社の事業や方針と、あなたの目標が重なる部分を探します。そして、それを上司に「提案」するのです。「今後、〇〇のスキルを伸ばしたいと考えています。これは、今チームが進めている△△のプロジェクトにも必ず役立つはずです。ぜひ、その関連業務に挑戦させていただけませんか?」というように。これは、単なる「わがまま」ではなく、あなたの成長と会社の利益を同時に実現する、極めて戦略的な「交渉」です。
巻き込む(上司を最大の味方にする)
あなたのキャリアプランを上司に知ってもらい、応援してもらえる「スポンサー」になってもらいましょう。1on1などの面談は、業務報告の場であると同時に、あなたのキャリアをアピールする絶好のプレゼンの機会です。あなたの熱意が伝われば、上司はきっと、あなたにチャンスを与えたいと考えてくれるはずです。
キャリアは、誰かから与えられるものではなく、自分で創り上げていくもの。今の会社を「ただ給料をもらう場所」と捉えるか、「自分を成長させるための最高の舞台」と捉えるかで、仕事の景色は180度変わるはずです。
まずは、あなたの「やってみたいことリスト」を、次の上司との面談で一つだけ、話してみることから始めてみませんか? あるいは、キャリア面談の中で語ってみませんか? ハンドルを握るあなたの手は、もう震えていないはずです。
長い時間と多大な労力をかけて、ついに完成した新しい評価制度。経営陣の承認も得て、いざ導入!…したはいいものの、なぜか現場は白けムード。「評価シートは提出されるけど、面談はただの世間話大会」「結局、評価がどう給与に結びついているのか、誰も知らない」。
…なんてこと、ありませんか? まるで、最新鋭の調理器具を買ったのに、結局いつも使っているフライパンに戻ってしまうような、あのやるせない気持ち。渾身の力作が、オフィスの片隅でホコリをかぶる「お飾り制度」になってしまうのは、あまりにも悲しいですよね。
今回は、そんな「作ったはいいけど回らない」評価制度を、現場が前のめりになる「活きた制度」へと変身させるための、3つのステップをご紹介します。
なぜ評価制度は「回らない」のか?
そもそも、なぜ制度はうまく回らないのでしょうか。多くの場合、原因は制度そのものの良し悪しよりも、「運用」の段階に潜んでいます。
目的の「翻訳」不足: 「全社的な生産性向上」という高尚な目的が、現場の社員にとっては「で、私に何のメリットが?」状態。
評価者の「丸腰」問題: 評価者研修をせずに、「あとはよろしく!」と評価者に丸投げ。武器を持たずに戦場へ送り出すようなものです。
納得感の「ブラックボックス」化: 評価結果と処遇(給与や昇進)の連携が不透明で、社員が不信感を抱いてしまう。
これでは、社員が制度に協力してくれるはずもありません。
脱・お飾り制度!まず着手すべき3つのステップ
完璧な制度を追い求める前に、まずは小さな一歩から始めてみましょう。
ステップ1:目的を現場の言葉に「翻訳」する
まずは、経営陣が掲げる高尚な目的を、現場の社員が「自分ごと」として捉えられる言葉に翻訳することから始めましょう。人事担当者は「経営と現場のバイリンガル」になるのです。
例えば、「生産性向上」という言葉を、「この評価シートの目標設定を使えば、あなたの残業が月5時間減らせるかもしれません」といった、具体的なメリットに置き換えて伝えてみましょう。社員一人ひとりの「うれしい!」に繋がることが、制度が自分ごとになる第一歩です。
ステップ2:評価者に「面談という武器」を授ける
評価者に「部下の成長を支援するのが君の役目だ!」と精神論を説くだけでは不十分。部下のやる気を引き出す面談の進め方、具体的なフィードバックの方法など、実践的なトレーニングを行いましょう。
良いフィードバックは、高級寿司屋の大将の握りのようなもの。ネタ(事実)とシャリ(期待や愛情)のバランスが肝心です。「君のこの頑張りは、チームにとって本当に大きいよ」といった、ポジティブな言葉を添える技術を伝授するだけで、面談の質は劇的に変わります。
ステップ3:小さな成功体験を「見える化」して拡散する
いきなり全社で完璧を目指す必要はありません。まずは協力的な部署やチームでモデルケースを作り、小さな成功体験を積み重ねましょう。
そして、「〇〇部のAさんが、評価面談で目標設定したことがきっかけで、すごい成果を出したらしい!」といったポジティブな口コミを、社内報や朝礼などで意図的に広めるのです。誰かの成功事例は、「うちの部でもやってみようか」という最高の推進力になります。
おわりに
評価制度は、「作って終わり」のプラモデルではなく、「育てていく」盆栽のようなものです。時には枝を切り、水をやり、愛情をかけて初めて、美しい形に育っていきます。
完璧な運用を目指して頭を抱える前に、まずは評価者の一人とランチに行き、「ぶっちゃけ、この制度どう思う?」と本音を聞き出すことから始めてみてはいかがでしょうか。その小さな一歩が、制度を力強く回転させる最初のひと押しになるはずです。
さあ、机の引き出しで眠っている評価制度の企画書を、もう一度開いてみませんか?今度はきっと、うまく回りますよ!