かつて、私たちは「正解」のある時代を生きていました。 良い大学に入り、良い会社に就職し、マニュアル通りに仕事をこなせば、未来は約束されていた。いわば、誰もが同じ「海図」を持って航海していた時代です。
しかし、今、その「海図」は役に立たなくなりました。 現代は、VUCA(ブーカ)と呼ばれる「正解のない、霧深い海」の真っただ中です。
「おい、AI。我が社が進むべき針路を教えろ」 経営者として、そう叫びたくなるお気持ちはよく分かります。確かに、AIは膨大な過去のデータを分析し、「最も確率の高い航路(最適解)」を瞬時に弾き出してくれるでしょう。
ですが、船長であるあなたに、一つだけ質問させてください。 AIは、見張り台から「水平線の向こうにある、かすかな嵐の兆候」に気づけるでしょうか? AIは、船倉で「仲間が漏らした、小さな不安の声」を察知できるでしょうか?
答えは「ノー」です。 AIは「分析」の天才ですが、「察知」のプロではありません。
だからこそ今、AI時代が本格化すればするほど、組織には『気づきニスト』——日常に潜むチャンスや自分の可能性に光を当てる専門家——の存在が不可欠になるのです。
「気づきニスト」が活躍する時代。それは、まさに「今」です。
VUCAの時代において、組織に必要なのは、過去のデータに基づいた壮大な「航海計画(コーゼーション)」ではありません。それよりも、目の前の「波の変化」や「風向き」にいち早く気づき、柔軟に「小さな一歩(エフェクチュエーション)」を踏み出しながら、進路を微調整していく能力です。
AIという「超優秀な分析官」が提示するデータ(海図)を鵜呑みにするのではなく、 「待てよ、現場の肌感覚と、このデータは少し違うぞ?」 「お客様の、あの微妙な表情の変化は、何を意味するんだ?」 と、AIには読み取れない「文脈」や「身体感覚」に気づけること。
その「気づき」こそが、AIを使いこなし、組織を沈没から守り、誰も到達したことのない「新大陸」へと導く、唯一無二の価値となります。
経営者や人事担当者の皆様。あなたの組織には、必ず「気づきニスト」の卵がいます。 「なんか、最近空気が重いんですよね…」 「このやり方、本当に今のままでいいんでしょうか?」
その、一見ネガティブにも聞こえる「小さな声」を、どうか「雑音」として処理しないでください。 その声こそ、AI時代という荒波を乗り越えるための、最も信頼できる「羅針盤」なのですから。
キャリアコンサルタントとして多くの方と対話する中で、ずっと不思議に思っていることがありました。
会社の研修や面談でお会いする方の中には、「会社のルールなので」「前例がないので」と、思考が停止してしまっている方が少なくありません。キャリアを会社に預け、変化の波にただ身を任せているように見えます。
一方で、自営業や経営者の方々は、まるで呼吸をするかのように新しいチャンスを見つけ、主体的に道を切り拓いていく。
この両者の違いは、一体どこにあるのでしょうか。
私は、その答えが「気づく力」にあると確信しています。
どんな環境でも楽しそうに仕事をしている人は、特別な才能があるわけではありません。他の人が見過ごしてしまう日常の些細な変化や、自分自身の心の動き、顧客の言葉の裏にある本音といった「サイン」**に気づく力が、ずば抜けて高いのです。
私は研修の場で、いつも「世の中、気づいたもん勝ちですよ」とお伝えしています。
そして、この言葉にはもう一つの意味があります。それは「築いたもん価値」です。
顧客の不満に気づくから、新しいサービスを築ける。
自分の隠れた強みに気づくから、唯一無二のキャリアを築ける。
職場の非効率に気づくから、より良いチームを築ける。
そう、「気づく」ことは、全ての価値創造のスタート地点なのです。
しかし、AIの進化がめざましい現代、ただ分析するだけでは価値は生まれません。AIが過去のデータを「分析」するのは得意ですが、会議室の空気の変化や、お客様の表情のかすかな曇りを「察知」することはできません。
この、人間にしかできない身体感覚を伴う「気づき」こそが、これからの時代を生き抜くための最強の武器になります。
私たち幸セMeetsが提唱する「気づきニスト」とは、まさにこの「気づく力」を磨き、対話を通じて価値を「繋げ」、行動によって未来を「変える」プロフェッショナルです。
このコラムでは、これから数回にわたって、誰もが「気づきニスト」になるための具体的な思考法や技術について、私の壮絶な体験談も交えながらお伝えしていきます。
まずは、あなたの日常に潜む小さな「気づき」から、一緒に見つけてみませんか?
先日、私は息をのむような4時間を経験しました。それは、巧妙に仕組まれた劇場型の詐欺の罠。警察を名乗る犯人たちの言葉巧みな誘導に、私の判断力は少しずつ、しかし確実に奪われていきました。
絶体絶命の状況でした。しかし、その分厚い絶望の霧の中で、私の心を微かに照らす一つの光がありました。それは「何かおかしい」という、小さな、しかし消えない「違和感」でした。
これは、決して他人事ではありません。
変化が激しく、情報が溢れる現代において、私たちは日々、無数の「認知の罠」に晒されています。それは時に、今回のような悪意ある罠として、またある時は、キャリアの可能性を見過ごさせる「思い込み」や、職場の問題を見えなくさせる「慣習」として、私たちの前に現れます。
では、どうすればその罠に気づき、自分らしい未来を切り拓いていけるのでしょうか。
その答えが、私たちが提唱する「気づきニスト」という新しい考え方です。
「気づきニスト」とは、日常に潜む小さなサインや変化に気づき、それを価値に変えるプロフェッショナルのこと。そのために、私たちは3つのアンテナを立てます。
内なるアンテナ(自己): 自分の心の声や「違和感」に耳を澄ます力。
組織へのアンテナ(他者): 周囲の期待やチームの変化を察知する力。
社会へのアンテナ(機会): 時代の流れや新しいチャンスを捉える力。
この「気づく力」は、なにも危機的状況のためだけにあるのではありません。むしろ、私たちのキャリアや日常を豊かにするためにこそ、真価を発揮します。見過ごしていた仕事のやりがい、新しいビジネスの種、より良い人間関係のヒント。私たちの周りは、気づきさえすれば、可能性の「宝の山」なのです。
幸セMeetsでは、この「気づきニスト」という新しい働き方・生き方を皆さんと一緒に探求していきます。まずは、あなたの日常に潜む小さな「気づき」から、一緒に見つけてみませんか?